研究内容
概要
様々なセンサを組み合わせて実世界の情報を計算機内に取り込み,ユーザの活動を支援するサービスを行うシステムを構築することを目的とする研究を行っています.
このようなシステムを構築するには,まず,机や椅子などといった我々の身近に存在している様々な物,あるいは,身に付ける衣類や装飾品などといった様々な物に,物理的な情報を認識する能力(センシング能力)を組み込んで「センサデバイス」として動作させ,我々の身の回りに配置する必要があります.また,配置したセンサデバイスはネットワークを用いて結合し,多様なセンサデータを取得する「センサネットワーク」を構築する必要があります.センサネットワークは,対象とするデータを十分に取得できる必要があるとともに,環境の変化にロバストであったり,一度敷設した後は永続的に利用可能である必要があります.これらの技術は今日,「IoT」と呼ばれて注目を集めています.
また,センサネットワークによって取得されたセンサデータから,対象とする人やその場の状況を把握する必要があります.この時,センサによって実環境から得られるデータはノイズが多く,ノイズ成分を除去する技術,あるいはノイズの中から意味のあるデータを抽出する技術が必要になります.そして,多種多様なセンサから得られるデータを統合して「誰が」「いつ」「どこで」「何を」「どうした」といった情報(「コンテキスト情報」)を計算機を使って推定を行う技術が必要になります.このような処理は「AI」を活用して行われます.
さらに,上記のようなコンテキスト情報を蓄積し,日常の生活リズムやあるいは非日常的な出来事をシステムが把握することで,ユーザの好みにあったサービスや,ユーザが本当にその時に必要とするサービスを提供することができるようになります.
これらの内容を図で表わすと下図のように階層化して考えることができますが,我々の研究室では,それぞれの層における要素技術並びに応用技術の研究を幅広く行っています.これらの技術はその対象に基づいて,「パーソナル/ウェアラブルスケールシステム」「ホーム/オフィススケールシステム」「アーバンスケールシステム」として捕らえ,それぞれプロジェクトを行っています.
キーワード:IoT,組み込みシステム,ウェアラブルコンピューティング,センサネットワーク,AI,行動・状況認識,コンテキストアウェアアプリケーション
パーソナル/ウェアラブルスケールシステム(Personal/Werable Scale Systems)
スマートフォンだけでなく,FitbitやApple Watchなどの腕時計型/リストバンド型のデバイスや,Google GlassやMoverio,JINS MEMEといった眼鏡型,あるいは心拍数をモニタリングするイヤホン,歩行や走りをモニタリングする靴など,「着る(常に身に付ける)コンピュータ」が数多く登場するようになってきました.人の活動をよく捕らえることを目的とし,これら既存のデバイスを複数接続して情報を取得する「ボディ・エリア・ネットワーク(Body Area Network; BAN)」や,ウェアラブルデバイス自体の開発,ウェアラブルデバイスから取得された情報をもとに,その人の行動や感情を推定するシステムの開発を行っています.
例えば,下の写真は救命率の向上を目指し,救急現場においてその場にいる人が救急救命措置を行うことを支援(その場で「正しい心配蘇生法」を教える)システムの研究の例です.(写真では両手首にセンサを付けています.)
ホーム/オフィススケールシステム(Home/Office scale Systems)
情報家電や掃除用ロボットなど,家やオフィス機器にも情報処理能力が備わってきました.上記のような人の行動・状況認識手法をこのような環境にひろげ,例えば,病院などで事故が起こらないよう,人の作業を支援するシステムの構築などを行っています.左の写真は,「人間ロボット共生リサーチセンター」と共同し,Terapioを利用してロボットが回診や介護を支援するシステム開発の例です.また,環境に多くの賢い「モノ」が存在するようになると,今度は「ユーザが欲しいと思うアプリケーション」を「ユーザ自身で作成できる」ことが重要になってきます.研究室では,右図のように「モノと会話する」あるいは「モノ同士が会話するような物語をつくる」方法で,簡単,かつ,楽しく,モノ同士が連携・協調して動作するアプリケーションの開発ができるアプリケーション開発環境の構築も行っています.
アーバンスケールシステム(Urban-scale systems)
携帯電話やウェアラブルコンピュータを利用することで,街中でも我々の生活を支援することもできるようになってきました.つまり,情報技術の側面からみた「街作り」ができるようになってきたと言えます.研究室では,救急救命を支援するシステムの開発や,右図のように,街中やテーマパークなどでの人の印象を地図上にマッピングするシステムの開発などを行っています.
その他
概要に書いたような目的に際し,その他,分散システムやオペレーティングシステム(基盤ソフトウェア)などの基礎的な技術に関する研究も行っています.
プロジェクト一覧